このブログでは、主に性同一性障害に関連する私自身の思いや活動の内容を書いています。

性別適合手術は、強制断種手術ではない。
旧優性保護法下において、遺伝性疾患や知的障害、精神障害の方の一部が国によって強制不妊手術を受けたという問題がクローズアップされ、補償を含めて話題になっています。(下記のリンクなどを参照ください)
  強制不妊手術の問題が今なぜ注目されるのか
  東京経済オンライン(https://toyokeizai.net/articles/-/218189
記事によれば過去1万6500件も実施されていたとのこと。被害に合われた方には心よりお見舞い申し上げます。

さて、これに便乗したわけでもないのでしょうが、性同一性障害特例法で性別の取扱いの変更を行うための要件のうち、第3条第1項4号に
四 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
とある規定を、国による不妊手術の強要であるとか強制断種であると主張する人がいます。
しかし、これは強制不妊手術にも強制断種にもあたらないということをはっきりと主張しておきたいと思います。

まず、記事にあるような国による強制不妊手術は、本人の同意無く行われたものです。しかし、性同一性障害における性別適合手術は、本人の強い希望によってのみ行われます。しかも全額自費で。
性同一性障害の当事者の多くは、手術を受けたいために懸命にお金を貯めて、精神科や婦人科や泌尿器科に(場合によっては何年も)通って診断書をもらい、更に手術まで何年も待たされたり時には海外に行ってまで受けるわけです。
更に言えば、元々手術を嫌がる医師を懇願の末になんとか説得して、ようやく始まったという経緯すらあるのです。
これのどこに強制性があるというのでしょう。

や、「手術は受けたくなかったが特例法によって戸籍の性別の取扱いを変更するためには受けざるを得なかった。これは一種の強制である。」と主張する人もいるようです。
ですが、これもおかしな話です。
そもそも性別適合手術は、身体に対して強い違和感があり、それを解消するために行われることになっています。精神科医が患者を診察して、本人が強く希望し、性別に対する違和感からくる苦痛・苦悩を取り除くためには手術をするしかないと判断して初めて行われるものです。しかもその診断が間違いでないように2人以上の精神科医が診ることになっていますし、更には専門家による判定会議も行われます。
当然、戸籍変更したいからというような個人の利得のために行うものではありませんし、それを理由として手術を希望しても、本来精神科医の診断は得られないし判定会議も通りません。
もし、本当は手術をしたくなかったけれど、戸籍の変更のために仕方なくやったという人がいるなら、その人は精神科医も判定会議のメンバーも騙したということです。

もうひとつ。性同一性障害特例法は「性別の取扱いの変更を行うには、手術をしなさい。」と言っているわけではありません。
手術も行い、男性として、あるいは女性として生きている人の戸籍上の性別を、そのままだとあまりに不便だろうから現状に合わせて変更しましょうという法律です。
つまり、「特例法の要件を満たすために手術をする」のではなく「手術をした人の性別を追認する」ための法律なのであり、順序が逆なのです。

以上から性別適合手術が強制不妊手術でないことがおわかりいただけたかと思います。
とにかく、こうした強制不妊手術とか強制断種であるかのようなネガティブキャンペーンやデタラメには騙されないようにお願いします。
| ran-yamamoto | 性同一性障害 | 16:12 | - | - |
島根県議の発言は「不適切」なのか?
「女性の風呂に男性のものをぶら下げた人が入ったら混乱する」と発言した島根県議の発言に、市民団体が謝罪を求める記者会見を開いたというニュースがありました。

いやいや、そりゃ女性のお風呂に男性のもをぶら下げた人が入ってきたら、混乱するどころか大騒ぎになるのは間違いありません。それが「素直な感覚」というものでしょう。
島根県議の人はそうした素直な感覚にそって発言されたわけで、謝る必要は全く無いと思いますよ。

そもそもお風呂が男湯/女湯と入浴場が分かれているのは必要性があってのことです。その女湯に一見で女性に見えない人が入浴してくるというのは本来あり得ないことですから、そこで混乱が起きたり騒ぎになるのは当然でしょう。
それでなくても女装した人が女性用のお風呂に入って逮捕されたりするニュースがよく流れる昨今です。女性はただでさえいろいろな性的被害にさらされています。

性別変更に手術要件が必要なのかどうかについては確かにいろいろな議論があります。世界的には手術要件を外す方向で動いているという話もあります。でも、日本においては入浴の習慣があるなど他国とは異なる事情もあるわけです。
手術要件の可否については私にも意見があるのでこれは別記事でまとめようと思いますが、百歩譲って未手術でも性別変更ができるようになったとしても「自分は戸籍上女性だ、女湯に入る権利があるんだ。」と声高に権利を振りかざして良いというものではありません。世の中基本は譲り合いなのですから、やはり受け入れてくれる女性側の心情にも配慮する必要性があるのは当然です。
男性器をぶら下げていても女湯を問題無く使えるようになるには、そういう女性もありうるということを多くの人が知り、受け入れてもらえるという環境が必要でしょう。そして、その環境ができるよう地道な努力をまずすべきなのではないでしょうか。

それにしても「県議の発言は残念だ。」くらいならまだしも謝罪を求めるって何様のつもりなんんでしょうか。上田さんは昔から女装コンテストを廃止に追い込んだり「おネエ」という表現にかみついたりと過敏な行動が目立ちます。
私は活動というものは「理解を求めるより共感を広げたい。」と思っています。頭で理解するのではなく、心で感じて欲しい。この件で言えば「あなたが女湯に入るのは当然だし、そうでないとおかしい。」と思ってもらうということです。それができなければ、真に受け入れてもらえたとは言えないからです。人権ゴロじゃないんですから、このような高飛車なやり方では決して共感は広がらないでしょう。
こういう活動だけは絶対にすまい、と強く思うのでした。


LGBTめぐる島根県議の発言は「不適切」 支援団体代表、謝罪求める
産経新聞関西版 2018年6月15日
https://www.sankei.com/west/news/180615/wst1806150091-n1.html

 国に性同一性障害特例法の改正を求める陳情を島根県議会に提出した市民団体代表が15日、島根県庁で記者会見し、昨年9月の審議の場で男性県議が「女性の風呂に男性のものをぶら下げた人が入ったら混乱する」と発言したのは不適切だとして謝罪を求めた。

 会見したのは性的少数者(LGBT)を支援する市民団体「のりこえねっと紫の風」の上田地優(ちひろ)代表。性別適合手術を受けなくても性別変更を認める法改正を国に請願するよう陳情で求めた。

 昨年9月26日、建設環境委員会で審査した際、この県議は、男性として生まれたLGBTが、手術をせずに「女性の風呂に入り中でひげでもそったら、(周囲の女性は)びびると思う」と発言した。取材に対し「心と体の性が一致する人にも配慮しなきゃいけないという趣旨だ。意見を変える気も謝る気もない」と答えている。

 上田代表は「県議は笑いながら発言していた。発言のレベルはネット上の誹謗中傷と同じで、同席の県の人権問題関係者から発言に反応や擁護がないこともショックだった」と話した。審議後、陳情を取り下げた。

 上田代表は、LGBTのコントラバス奏者の公演ポスターに「おネエ系」という言葉が使われたのは「不快」だと指摘。9日開催予定だった公演は中止となり、会見はその経緯を説明するとして開かれた。
| ran-yamamoto | 性同一性障害 | 23:41 | - | - |
gid.jpを再起動
gid.jpロゴセット

gid.jpを再起動することにしました。

昨年5月、一般社団法人gid.jp日本性同一性障害と共に生きる人々の会(以降「旧会」とします)の代表を退任しました。退任後は基本的には活動には関わらないつもりでした。これは、健康上の理由もありましたが、新たに選任された役員の人がやりにくいだろうと思ったことと、少なくとも私が進めてきた理念や活動は引き継いでもらえるだろうという期待があったからです。

でも、残念ながらそれは叶いませんでした。特に活動に関しては継承されるどころか全否定からスタートしました。更には私がやってきたことに対して、事実誤認したり憶測で決めつけただけで無く、誹謗中傷すらされてしまいました。特に年度末決算では、自分たちの会計処理の誤りを引継時に使途不明金が発生したということにされる始末です。これらに関しては事実を伝え訂正を要求してきましたが、回答は遂に得られませんでした。
更に新執行部で公約として掲げたものも、何一つと言って良いほど実行されていません。支部はそれなりに交流会を開催していますがそれだけで、対外的な要望活動なども一切行われていないようです。これではもう先は無いと思った方が良いでしょう。

今まで一緒にやってきた仲間も多くが旧会を離れたようです。北陸や沖縄の支部も活動を休止しました。離れた人にも残されたみなさんにも本当に申し訳ない思いです。
性同一性障害の問題は、まだまだ課題が山積しています。このままでは解決できないまま残ってしまいそうです。
ここはやはり自分の責任において、もう一度会を立ち上げ直さなければならないと決意しました。

新しい会の名称は「日本性別不合・性別違和と共に生きる人々の会(仮称)」としました。
(仮称)となっているのは、いろいろな意味でまだ正式に決定したわけでは無いからです。

まもなくICD-11が発効し、Gender Identity DisorderがGender Incongruenceに名称変更される予定になっています。日本語訳は性別不合の予定です。また一昨年発効したDSM-5では既にGender Dysphoriaに変更になりました。こちらの日本語訳は性別違和です。日本ではこの両者が使われる予定であることから、併記することにしました。
また「共に生きる人々の会」の部分は元々私が考えた言葉で、その疾患を抱えて生きているということと、当事者のみならずそのご家族などの関係者の方も含めて対象としていることを明示できると思っています。

略称はgid.jpです。これは、会のドメインであるところから由来しています。GIDは本来、Gender Identity Disorderの頭文字ですが、Gender Incongruence/Dysphoriaの略でもあるという、ちょっと強引ではありますがそう解釈できないこともないということでそのまま継承することにしました。
また、私自身思い入れのある名称であること、またそれなりに著名になっていることも理由です。

ところでこのgid.jpというドメイン、元々私が個人的に所有していて旧会に貸与していたものなのですが、引継時にやりとりがあっただけで、それ以降旧会からは一度も継続使用やドメイン譲渡の相談はありませんでした。にも関わらず「ドメインを継続使用できるめどが立たない」のだとか。本当にウソばっかり言う人たちです。
まぁ、元々継続使用するつもりがないということなのでしょうから、それでは心置きなく私の方で使わせていただくことにします。

新しい会では、一緒に活動してくださるスタッフを募集しています。
ボランティアで報酬等はお支払いできませんが、活動に協力いただけるとありがたいです。ぜひ一緒にやりましょう!

詳しくは、下記ホームページをご覧ください。
https://gid.jp/
新gid.jpのこれからの活動に、どうかご期待ください。
| ran-yamamoto | gid.jp | 19:53 | - | - |
戸籍の性別の取扱い変更後のホルモン療法は、性同一性障害の治療としてでなければ保険適用で問題ない
昨日16日、先日お伝えした「性別の取扱いの変更後のホルモン療法に対する健康保険適用にNGが出る」件につき、厚生労働省官僚と話し合ってきました。
その時の内容を以下に記しておきます。

  1. 性同一性障害に対するホルモン療法は、薬事承認を得ていないことから健康保険の適用外である。これは従前から変わっていない。
  2. 本年3月30日に発出した「疑義解釈資料の送付について(その1)」の問199では、同一の疾病に対する一連の治療として、保険適用外の治療と保険適用の治療を組み合わせて行うことは認められない、という保険診療の大原則を示したものである。
    これは、戸籍変更後のホルモン療法に関して言及したものではないし、この疑義解釈資料で新たにホルモン療法を保険適用外としたわけではない。
  3. 個別のケースの取扱いについてはそれぞれに事情があり、最終的には手術や戸籍変更の有無にかかわらず各医療機関や審査支払機関で個別の判断があり得る。それぞれの個別のケースについて厚生労働省が逐次指示や判断する立場にはない。
  4. 性別適合手術後のホルモン療法に関しては、担当医師が性腺除去によるホルモン不足を補うための治療として投与することはありうると承知している。
  5. 今回のケースは、元々保険適用と判断されていたものが今後は適用外とされたわけだが、その理由は不明である。審査支払機関から疑義照会があれば、適切に対応したい。
ということです。
ちょっとわかりにくいですが、要は病名が「性同一性障害」であれば、戸籍変更していても健康保険は適用されないけれども「卵巣機能不全」や「男性性腺機能不全」等ホルモン製剤が薬事承認を得ている病名であればば健康保険適用として問題ないということです。
打合せの最後に、厚労省の担当官から個人的な意見だがと断った上で「戸籍上男性である者に男性ホルモンの治療を行うことに、何の不都合があるのかとは思う」と仰っていただきました。これ、本当に「普通」の感覚だと思います。
この件、いままでグレーゾーンなイメージでしたが、これですっきりしました。

とは言うものの、戸籍の性別変更を行っていれば必ず保険適用となるわけではありません。というのは、ホルモン療法が「性同一性障害」の治療のために行っているのであれば、保険適用外だからです。
そして、行っている治療が性同一性障害の治療のためなのか、性腺除去によるホルモン不足解消のための治療であるのかは、担当医師や審査支払機関の判断によります。医師が性腺除去によるホルモン不足解消のためとしても、審査支払機関でそれを認めない可能性もあり得ます。厚労省が「個別の判断があり得る」と言っているのはまさにこれです。
ですので100%保証ができるわけではありませんが、戸籍変更後のホルモン療法を自費診療とされている方がいらっしゃれば、まずは担当医と相談してみてください。

下記に主なホルモン製剤が薬事承認を得ている効能・効果について一覧にしてみました。
FTMの方が使っているエナルモンデポーは、「男子性腺機能不全」になるでしょう。
MTFの方は使っている薬剤が多く、それぞれに効能・効果が違うので注意が必要です。
プロギノンデポーであれば「卵巣欠落症状」か「更年期障害」、プレマリンであれば「卵巣欠落症状」「卵巣機能不全症」「更年期障害」、ジュリナであれば「更年期障害」でしょうか。
ただし、それぞれに用量が決まっていますので、それも注意が必要です。

   <主なホルモン製剤の薬事承認を得ている効能・効果>
薬剤名効能または効果
エナルモンデポー男子性腺機能不全(類宦官症)
造精機能障害による男子不妊症再生不良性貧血,骨髄線維症,腎性貧血
プロギノンデポー
ペラニンデポー
無月経、月経周期異常(稀発月経、多発月経)、月経量異常(過少月経、過多月経)、月経困難症、機能性子宮出血、子宮発育不全症、卵巣欠落症状、更年期障害、不妊症
プレマリン卵巣欠落症状、卵巣機能不全症、更年期障害、腟炎(老人、小児および非特異性)、機能性子宮出血
ジュリナ更年期障害及び卵巣欠落症状に伴う下記症状
    血管運動神経症状(Hot flush及び発汗)、腟萎縮症状
閉経後骨粗鬆症
このほかの薬剤に関しては、PMDA(医薬品医療機器総合機構)のHPなどをご参照ください。
| ran-yamamoto | 性同一性障害 | 00:58 | - | - |
性別の取扱いの変更後のホルモン療法に対する健康保険適用にNGが出る
某K県にある、この県でほぼ唯一ともいえる性同一性障害の患者を受け入れていただいているクリニックの院長から連絡を受けたのですが、このクリニックで治療されている戸籍変更後の当事者に対するホルモン療法について、従来保険診療で行っていたものを保険適用外とするという指導があったもようです。

このクリニックでは、病名を「卵巣機能不全」「男子性腺機能不全」などとして申請していたのですが、クリニックの規模にしては患者が多すぎるということで査察が入たようです。それで性同一性障害の人の戸籍変更後の治療だったということがわかったのですが、今年3月末に厚労省から出された通知でホルモン療法が保険適用外であることが明確になったということが理由となり、今後はNGとされたようです。

従来、性同一性障害特例法による戸籍の性別の取扱いの変更後のホルモン療法に関しては健康保険がほぼ適用されてきました。
しかし実はこれ、実は昨年8月の厚労省とのミーティングでも話題に出たのですが、実は明確な回答がないままうやむやになっていました。ただ、少なくとも黙認されてきたはずです。

性同一性障害として治療を始めたとしても、戸籍の変更まで終了すると、その当人の性同一性は、身体的にも精神的にも社会生活上も法的にも確立され、性同一性障害はこの時点で治癒あるいは寛解したと考えられます。
しかし、性別適合手術により性腺を除去している状況にあるため、そのままではホルモン不足に陥ります。それを補充するためにはホルモン充填療法が必要になります。
性ホルモンは人が生きていく上では必須のものです。これが不足すると更年期障害や骨粗鬆症など様々な悪影響が出ることが知られています。
つまり、性別適合手術後のホルモン療法は、性同一性障害ための治療ではなくホルモン不足を解消するための手段ということになり、その目的が変わります。
そして、性ホルモンは戸籍が男性であればアンドロゲン、戸籍が女性であればエストロゲンとなります。

このように、戸籍変更後のホルモン療法は性同一性障害の治療ではなくホルモン不足を補う治療であるという前提であれば、何の問題も無いはずですし、病名の「卵巣機能不全」「男子性腺機能不全」というのも間違いというわけでもありません。

いずれにせよ、非常に影響の大きな問題と言えるでしょう。同様の動きが他府県に広がる可能性も危惧されます。
まずは、来週早々にでも厚労省に連絡をとって経緯を説明し、対応を考えなければなりません。
| ran-yamamoto | 性同一性障害 | 23:12 | - | - |
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