※写真は、2009年外務省で西村政務官(当時)と面会し、要望書をお渡しした時のものです。
カナダがパスポート(旅券)の性別表記にXを認めることになったという記事が出ていました。
カナダ、公的書類に第3の性の選択肢「X」容認へ(AFP)
パスポートのフォーマットは国連の専門機関である国際民間航空機関(ICAO)で決められているのですが、性別記載については元々M/F/Xの表記が許容されており、今に始まったことではありません。オーストラリアやニュージーランドでは20年以上前から実施されています。
それどころか、アメリカを始め戸籍や出生証明書の性別とは異なる性を登録できる国も多数あります。日本だけがかたくなに遅れているんですよね。
性別変更をまだ行っていない、あるいはできない性同一性障害の当事者は、旅券に書かれた性別と本人の容姿が異なることで入出国のイミグレーションで疑われ、場合によっては入国できないこともありえます。ホテルのチェックインやクレジットカード、トラベラーズチェックの使用と言った場合にもパスポートの提示を求められ、無用なトラブルに巻き込まれる可能性があります。更には、ヘイトクライム(憎悪犯罪)により、身の危険にさらされる可能性さえ無くはありません。
旅券の最初のページには「日本国民である本旅券の所持人を通路故障なく旅行させ、かつ、同人に必要な保護扶助を与えられるよう、関係の諸官に要請する。」とあります。しかし性同一性障害の当事者が旅券を保持して旅行することは、逆に本人を危険にさらすことにもなりかねないのです。
実は2009年、まだ民主党政権だったころ当時の外務省西村政務官と面会し、旅券の性別欄につき削除または本人の自認する性別、あるいはXの記載ができないか要望したことがあります。
面談には政務官だけでなく領事部旅券課の官僚の方も同席され、同省の考えも聞かせてもらえました。
それによれば、
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パスポートにおける記載事項は、国際民間航空機関によってその体裁や記載事項が規定されているため、日本独自の判断で性別欄を削除することはできない。
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現在性別の記載は、旅券法施行規則第1条6項により規定されている。
本記載においては、戸籍謄本または抄本を本人を公証する手段として提出が定められており、それを唯一の根拠として記載を行っているので、戸籍に記載されている以外の表記とすることはできない。
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従って、性同一性障害を有する者に対して、戸籍に記載されている表記以外の表記とするためには、それを可能とする根拠が必要。つまり解釈ではなく、何らかの法律が整備される必要がある。
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性別の扱いについて、外務省だけが突出することはできない。政権全体として考えていくべき課題。
ということでした。
つまり外務省としてはやりたくでもできないというように聞こえます。まぁ、半分は言い訳かもしれませんが。
しかし、言い分は理解しました。
確かに性別をどう扱うのか、というのは政府として、国全体として考えるべき課題です。
私は、現在の性同一性省が特例法は廃止して、「性同一性障害基本法」というようなものを作りたいと考えています。
この法律に差別や不利益の解消などを含め、性別変更や性別についてどう扱うかを規定するわけです。その中で性別変更していない人に対する扱いも決めておきます。
そうなれば、旅券の性別だけでなく、マイナンバーや健康保険証の性別など様々な問題が解決に向けて進むでしょう。
なんとかまだ動ける内に、そうした流れを作れれば良いのですが。